相違

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マ、マズい!! 事態に気付いた時には、既に遅かった。 俺の右手には、パキパキと音を鳴らし氷が覆っている。 氷は右手から右腕まで及ぶ。 一瞬の内に、俺の右腕は凍りついてしまった。 「くっ……!!」 やべぇ……。 全然、動かない。 超、冷たい。 超、重い。 こんなものが、辺り一面を舞っているのか……。 ままならねぇな。 「カズ これでおしまいよ 無駄な抵抗は止めなさい」 ノエルはそう言って、自らの優位性を訴えた。 くっ……! くっくっ……。 ククク……。 さて、ノエルの顔を立ててやるのはここまでだ。 俺がその雪に触れたくなかったのは、こうなる事を危惧したからじゃない。 心優しい俺の性格を鑑みれば、理解するのは容易だろう。 俺は、ノエルに危害を加えたくなかった。 だが、こうなってしまっては仕方ない。 この、雪はノエルの魔力によって造られた物。 そして、未だに凍り続けている様子から察するに、この氷には魔力が宿っている。 だったら、"これ"が使える筈だ。 「無駄な抵抗だと? それはこっちの台詞だ」 「なんですって?」 「"闇術"『略奪』」 言って、俺は自らの右腕に意識を集中させる。 すると、俺の右腕にへばりついている氷がどす黒く変色した。 かと思えば、氷は俺の内部へと消えていく。 ククク……。 今度はうまくいった。 後は……。 「ほら、返してやるよ」 俺は自由になった右腕を振るって、ノエルへと向けた。 「へ?」 次の瞬間。 ノエルの右腕が瞬時に凍りついた。 「これで分かっただろ? 俺に魔術は通用しないんだよ 分かったらさっさと道を開けろ」 俺は逆転劇を見せ付け、ノエルを追い詰める。 が。 「フン…… 奇遇ね 魔術が通用しないのは私も同じよ」 ノエルは、訳の分からない戯れ言を言い出した。 「は? 嘘をつくんじゃねぇよ」 「まぁ、そうね 厳密に言えば、"氷の魔術"が効かないって事なんだけどね」 なに? 「どういう事だ?」 「"魔雪氷界陣"には、もう一つの効力があるの それは、自らの魔術で自壊しない為の安全処置"氷耐性上昇"よ まぁ、限度はあるんだけど…… 要するに、今の私に氷は効かないって事よ」 得意気に言った後、ノエルの右腕を覆っていた氷はボロボロと崩れ落ちた。 マジかよ……。
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