相違

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チッ……。 何か特別な効力があるかも知れないとは思っていたが、"氷耐性上昇"なんて効力があったのか。 だったら。 「ジリ貧かよ どっちも、魔術が通用しないんじゃあ、いつまで経っても決着がつかねぇぞ」 俺が現状の問題を告げると。 「それは、どうかしら?」 ノエルは意味深に、そう言った。 「どういう意味だ?」 俺が問うと、ノエルは説明をしてくれた。 「基本的な事だけど 例外なく、魔術を使うと魔力を消費するの 私もこの奥義で、かなりの魔力を消費しちゃったけど…… カズはどうなの?」 「なに?」 「カズのその魔術も魔力を消費する筈よ それに、そんなふざけた魔術は、それ相応の魔力が必要な筈」 「何が言いたい?」 「人間は魔力量が少ない人種 それにカズは、つい最近魔力の潜在に気付いたらしいじゃない? だったら魔術を扱う練度も低く、魔力の燃費も悪い」 「つまり?」 「つまり、カズ アンタの魔力はもうすぐ枯渇する そうなったら、もはや成す術はないわ」 …………。 なるほど。 確かに、ノエルの言っている事は、理に適っている。 俺だって、闇術を無尽蔵に扱えると思っている程に、頭はめでたくない。 まぁ、今のところ体にそんな異変は感じないが……。 いざという時にはミリアの為に買っておいた"魔給水"がある。 それを使えばピンチは回避できるだろうが、ピンチなんて招くものじゃない。 それに、ミリアの為に買った物だし、できれば使いたくないからな。 だからこそ、そのいざという時が来る前に、決着をつければいい。 先ずはノエルの思惑を考えろ。 対策はそこからだ。 恐らくノエルの狙いは、俺の魔力をなくし、俺が"略奪"を使えなくなった頃を見計らって、この鬱陶しい雪で捕らえるつもりだろう。 と、思った時、ノエルは続けた。 「今頃、私の魔術を感知したティナが、この場所を探している筈よ カズ、あなたに勝ち目はないわ」 あ、違うわ。 ノエルの狙いは、時間稼ぎだ。 俺を足止めしている間、増援を呼んでいるティナが来るのを待っているのか。 くっそ……! 流石に大人数の相手は面倒だ。 なんとか、ノエルの魔術を抑える事ができれば……。 ここから逃れる活路を、見出す事ができるかも知れない。 俺は、闇術の応用を考えた。
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