相違

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「え……?」 俺の問い掛けに、ノエルは言葉を詰まらせていた。 恐らく、それを聞いてきた俺の思惑が分からなかったのだろう。 だったら、教えてやるよ。 「ノエル お前が禁足地を目指している理由は、人間の在り方を知る為だった筈だ そうだろう?」 俺には分かっていた。 ノエルは以前、自分で、そう公言していたからだ。 なぜ、人間が劣等種と成っているのか。 その理由を知る為に、ここでは入手できない情報を求め、世界を回り禁足地を目指すのだと。 俺の確認にノエルは。 「そ、そうだけど…… 今、それがなんの関係があるの!?」 話の脈絡を求めている。 ふむ……。 そうだな。 「関係あるかどうかは、ノエルを受け取り方次第だ」 「え?」 俺は、この話を持ち出した理由を説明した。 「自らが人間である事に劣等感を感じている事 その理由を知る為に、不相応にも禁足地を目指している事 これらは全て、ノエルの潜在的な性質に所以していると思わないか?」 「私の潜在的性質?」 「そうだ ノエルが今までやってきた事は、 お前が"地球の人間"だからこそに所以している」 そう。 ノエルが、地球の人間かどうかなんて、もはや確かめる術はない。 だが、その可能性は極めて高いと俺は踏んでいる。 だったら、いっそのこと断言してしまおう。 俺が言い切ると、ノエルは困惑した様子で説明を求めてきた。 「な、なんでそう言い切れるのよ?」 「だってそうだろう? 考えてもみろ 他の人間は、自分の力量を弁えて禁足地なんぞを目指す奴なんて1人も居ない」 「そ、それは……」 「だが、ノエル お前は、他の人間とは明らかに違う それは、お前の中にある"本来の人間らしさ"が、そうさせているんだ かつて築いた人間の栄光が、この世界で廃れてしまっている事に劣等感を感じている故だ」 「…………」 ノエルは考え、黙り込んでしまった。 よし。 隙が見え始めた。 だめ押しの、もう一声。 「ノエル 今、お前が俺を止めているのは、 かつての同胞を侮辱している行為と同義だ お前は地球の人間として、俺を止める大義があるのか?」
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