相違

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俺のだめ押しに、ノエルは。 「ち、違う…… 私は、ただカズの身が心配なだけ…… カズの行動は、きっと取り返しのつかない事態を招くから……」 なにやら、ぶつぶつと言っている。 どうやら自分自身に言い聞かせ、俺を止める事に対する正当化をしている様だ。 その時のノエルは、動揺を隠せないでいた。 つまり、隙が生まれていた。 つまり、攻めるなら今だ。 「フン 俺の身が心配だと? 斬りかかってきたくせによく言うぜ」 言って、俺は右手にどす黒い煙を纏う。 コレの出し方も慣れたものだ。 今度から、コレを"闇"と呼ぼう。 闇を纏った俺は、ついに行動を起こす。 ノエル目掛けて走り出した。 舞い散る雪が、俺の体の節々に接触する。 接触した雪は、氷に姿を変え、俺の体を覆い尽くす。 フン! 構うものか! 俺は体が凍りながらでも、歩を進める事を止めなかった。 その時。 俺の体が途端に停止した。 ん? その理由は直ぐに分かった。 膝が凍りついている。 ふむ。 流石に、関節部分を固められたら、動けないか。 だったら……。 俺は凍りついた膝に、闇を当てる。 すると、膝の可動を奪っていた氷は、闇に飲まれ消えていく。 "闇術"『略奪』は、こういう時に便利だ。 動ける様になった俺は、再び走り出しノエルに近付く。 その間でも、この鬱陶しい雪は容赦なく俺の身動きを奪っていく。 だが、俺の闇術の前では恐れるに足りない。 "変わった雪"程度の認識しかねぇな。 闇術を駆使し、ついに俺はノエルの目前にたどり着いた。 ノエルは自問自答に夢中で、俺の接近に気付いていない。 のは、ついさっきまでか。 「え……」 今、気付いたみたいだ。 「くっ……!」 事態を把握したノエルは、杖を振るい、雪を操った。 せめてもの抵抗のつもりか。 だが、気付くのが遅過ぎたな。 俺は、闇を纏う右手をノエルの顔面に目掛けて突き出した。
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