相違

103/105
前へ
/805ページ
次へ
ノエルは、俺が先程"略奪"によって跳ね返した氷によって、一時的にだが身動きが封じられていた。 氷耐性のあるノエルに、あの氷による束縛は長くは保たない。 本当に一瞬の隙だ。 だが。 戦闘において、一瞬の隙というのは命取りになりかねない。 俺はその隙を見逃さない。 ノエルの顔面に迫る俺の右手。 このまま、触れる事ができればノエルを無力化できる筈だ。 そして、いよいよノエルに触れようとした時。 「――!?」 俺の右腕が静止した。 チッ……! またか。 見ると、俺の右腕には氷が覆い、パキパキと音を鳴らして凍り始めていた。 本当に厄介な魔術だ。 まぁ、ノエルとの距離も残り僅かだ。 このまま、力ずくにでも動かすか。 俺は右手を無理やり、動かした。 ググッと、ゆっくり迫る右手は、ついにノエルの顔面を捉えた。 正確には、額辺りだ。 額を、俺に鷲掴みされたノエルは。 「な、なにを!?」 かなり焦っていた。 「いいから じっとしていろ」 そう言って、俺は右手に意識を集中させ、闇の出力を上げてみた。 すると……。 ん? なんだこの感じは……? 俺の中で、何かが満たされていくのを感じる。 これは……魔力か? 魔力量が回復している。 いや、魔力だけじゃない。 疲労や、眠気や、空腹感。 挙げ句の果てには、手のひらに受けた傷。 そんなものが、全て回復しているのが分かる。 良い気分だ。 体が軽く、今なら何でもできる気がする。 効果としては、期待以上だ。 ふと周りを見ると、ノエルの展開していた六花の形をした魔法陣は消えていた。 どうやら、"魔雪氷界陣"が解除されたらしい。 その為か、俺にへばりついていた氷も、その結合力がなくなりボロボロと崩れていく。 当のノエルは。 「あ……あ゛ぁ……!!」 なんか、苦しそうにもがいている。 あ、やっべ。 俺は慌てて、右手をノエルから離した。
/805ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5125人が本棚に入れています
本棚に追加