相違

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俺が右手を離した途端に、ノエルは四つん這いになって倒れた。 「ハァ……ハァ……」 ノエルの息は荒く、明らかに憔悴しきっていた。 時折、指をプルプルと震わせている。 杖を握る力すら、無さそうだった。 「カズ…… アンタ、私に一体何をしたの?」 ノエルは俺を睨み付けて、そう尋ねてきた。 "何をしたか"だと? ふむ……。 そうだな……。 ノエルの状態を察するに、俺がやった事は……。 ノエルの体力を吸い取った。 と、考えるのが妥当だろう。 それも、魔力だけじゃなく、あらゆる体力の回復に、負傷の治癒能力まである。 ククク……。 チートだな。 この"闇術"に、術名を付けるとしたら。 「"闇術"『吸精』 ノエルからあらゆる体力を吸収した お前に、もう俺を止める力はない」 俺はノエルの質問にそう答えた。 今度こそ、ノエルに成す術はない。 俺の発言にノエルは。 「そ、そんな…… 嫌……、行かないで……!」 首を横に振って、涙目で訴えた。 そんなノエルを尻目に、俺は悠然とその横を通る。 「ノエルの体力なら、しばらくしたら回復すると思うぜ お前は俺なんかに構うより、これからは自分が地球の人間としてやるべき事を考えるんだな」 言って、俺は自分の上着を脱ぐと、せめてもの慈悲でノエルに被せた。 女の子が体を冷やすのは感心しないからな。 俺、超紳士。 「カ、カズ……! 嫌……、嫌だ……! お願いだから行かないで!」 「じゃあな」 俺は、ポンとノエルの頭を撫でるとそのまま歩を進めた。
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