消失

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地下水路を抜けると、街郊外の川に出た。 その川は小川だったが、そのまま河川に合流していた。 俺は川から出て、道へと移った。 振り返ると、少し離れたところにニルバニアが見えた。 そうか、ついに脱出してきたんだな。 あの、腐れ狂信国家から。 フン! 思い入れなどなにもない俺は、向きを直して歩き出した。 取り敢えずの目的は、ウォーレンに会う事だ。 ウォーレンは、"竜人"の目撃者だ。 ニルヴァーナの化身と言われている竜人。 その居場所を知るのはウォーレンだけだからだ。 確かウォーレンは、ウルバキアに向かったんだったな。 よし。 俺はニルバニアへと帰還した際に通った道を、戻る様に進んだ。 辺りは当たり前だが、かなり暗い。 そりゃそうだ。 夜だからな。 ノエルに上着を渡した俺の服装は、黒のシャツ一枚で、周りの暗さと同調していた。 ってか、格好つけてあんな事したけど……。 よく考えたら、あの上着には"透化"の機能があったんだよな……。 リコありきの機能で、ノエルには使えないが……。 何やってんだ俺。 考えてみたら、俺の装備はもうほとんど残っていない。 さっきの上着然り、小銃はノエルに、ナイフはラクターに……。 俺に残されたのは、弾数2発の拳銃と、リコだけだ。 まぁ、装備が貧弱でも、それに代わって余りある力を手に入れた。 ――"闇術"。 これさえ使いこなせれば、俺に敵はない。 ミリアが弱い術とか言っていたが、そんな事はねぇじゃねぇか。 弱いどころかチートだ。 そういえばミリアは、"闇術"を教えてくれると言っていたな。 "魔給水"を届ける約束もしていたし。 行く方向も同じだ。 そうだな……。 "闇術"について詳しく聞いてみたいし、ひとまずミリアを訪ねてみるか。 ウォーレンはその後だ。 俺は目的を新たに定め、ミリアの住処である洞窟を目指した。 しばらく歩いた時。 それは突然起きた。 カクンと、俺は膝から崩れ落ちた。 あ、あれ……? なんだ?
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