消失

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こんな時に魔物とか、なんて間の悪い。 「マスター!! 逃げましょう!! 今のマスターでは太刀打ちできません!!」 リコは、かなり焦っている様子だった。 俺だって逃げられるものならそうしたい。 どんな魔物か知らないが、今の俺がまともに闘える状態じゃない事くらい分かってる。 でもな……。 体が動かないんだよ。 「逃げたいのは山々だ だが、今の俺は満足に動けそうもない 魔物の種類によっては、このままなんとか迎撃できるかも知れない 熱反応から得られる情報を教えろ」 俺はリコにそう伝えると、震える足をなんとか動かし立ち上がった。 うっ……。 フラフラする。 立ち眩みか。 なんでこんな事に……。 俺は自分の状態に苛立ちを感じながら、拳銃を取り出した。 片手では落としてしまいそうだったので、両手でしっかり保持をする。 それでも、万全の射撃姿勢とはいかない。 その闘う意思を汲んだのか、俺の命令にリコは従う。 「わ、分かりました! 私も援護します」 「おう で? 魔物の情報は?」 「はい! それが…… 妙なんです」 ん? "妙"? 「一体どういう事だ?」 「はい 熱反応を感知したのは間違いないのですが…… その熱反応がおかしいのです」 「おかしい? 具体的には?」 「はい 熱反応が一定しておらず、反応そのものが現れたり消えたりと不安定なんです」 「なんだそりゃ?」 「ここからでは詳しい事は分かりません ただ……」 「ただ?」 「その熱反応が"体温"ではない事は確かです」 は? 体温がない? それ生物か? 俺がその情報を聞いて、混乱していた時。 「――!? マスター!! 対象の動きが予想以上に速いです!! まもなく会敵します!!」 リコが、突然叫んだ。 は!? まもなくって。 マジかよ その時。 俺が身構える暇もなく、ソレは突然、上から降ってきた。 ドンっと、土埃を巻き上げ地面に着地したソレ。 俺にとって、ソレは見慣れた生物だった。 大きさ以外は……。 俺の前に現れた魔物。 それは、"蜘蛛"だった。 それも、とびきりデカいやつ。
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