消失

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「マスター!!!」 リコが事態を把握したのも束の間。 俺はバランスを崩し、その場に倒れた。 その直後。 俺を激痛が襲った。 「ぐっ…… ぐぁあぁあああ!!!!」 ドクドクと左足、ふくらはぎから血が流れている。 「ぐぅ……! ハァ……ハァ……!!」 とにかく止血を……。 ダメだ、力が入らない。 くっそ……!! なんか、絶体絶命なんですけど。 上体だけを起こして、地面に座り込む俺。 そんな俺を、蜘蛛はしばし眺めていた。 直ぐに食う気はないらしい。 虫ならではの警戒心の高さか? とにかく、この状況を脱しなければ。 「リコ!! 今の内だ!! この蜘蛛の弱点を探せ!!」 「ですがマスター 治療を……」 「それができない状況だから、切迫してるんだよ! 早くしろ!」 「は、はい!」 俺の命令を聞き、リコは続ける。 「アストランにおける、この蜘蛛の詳しい分類は今検索中です ですが、蜘蛛の弱点はどれも同じ筈です」 「と言うと?」 「蜘蛛には、体の後ろの方の背中に沿って"背脈管"と呼ばれている、人で言うところの"心臓"があります」 ふむ。 なるほど。 弱点は背中か。 背中だと!? マジかよ。 弱点は分かったが、この向きからじゃ狙えないぞ。 俺が困っている時。 「しかしマスター…… この"背脈管"ですが…… 拳銃弾を数発当てたぐらいでは、死に至らしめる程のダメージは与えられません」 リコは冷静に、現状の問題点を指摘した。 「な!?」 「それ程、"虫"という生物は強靭なんです」 おいおい。 絶望しかねぇぞ。 打つ手がないとなると、いよいよ本格的にマジで超絶ピンチなんだが。 絶望感に打ちひしがれている時。 「マスター! 私に作戦があります!!」 リコがなにやら策を提示してきた。 俺が何を考えたところで、名案はでそうにないし……。 よし。 「言ってみろ」 俺はリコの作戦とやらに、乗る事にした。
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