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「ギギギギ……」
蜘蛛は全身にパチパチと電気を帯電させ、沈黙していた。
だが……。
妙だ……。
これは、ダメージを与えられているのか?
暗くてよく見えないが、蜘蛛の体表が焼けている風には見えない。
「リコ」
俺はリコに確認をとった。
すると、リコは。
「そんな……
まさか……」
俺の発言に気付かない様子で、自分だけでなにかを感じ取っていた。
「おい、リコ!」
俺が再度、呼びかけると。
「――!
すみませんマスター!」
やっと反応した。
「どうしたんだ?」
「はい
実はこの蜘蛛……
私の電撃を帯電させているんです」
ん?
「帯電?
それはリコが放った電撃の余波が、蜘蛛を纏っているだけだろ?」
「いえ
違います
この蜘蛛は私の電撃を、全て吸収しているんです」
はぁ!?
「おい
それはどういう事だ?」
「それが……
今し方、蜘蛛の正体について検索が完了しました」
「なに?」
「この蜘蛛の名称は、"紫電蜘"
夜行性で無脊椎の魔物です
危険度はBランクですが、個体によってはAランク相当にも匹敵し得るそうです」
"紫電蜘"?
おいおい。
名称に、モロ"雷"って言ってるじゃねぇか。
リコは続けた。
「紫電蜘の特徴ですが
あの腹に蓄えた体毛に電気を帯電させ、その電気を操って、獲物の動き封じ捕らえるという生態をしています」
電気を操るだと?
「って事は……」
俺が嫌な予感を募らせていると。
「はい
私の電撃は、紫電蜘に吸収されただけでなく、紫電蜘の力に変換されてしまったのです」
リコが最悪な事実を説明した。
そうか。
最初、リコが紫電蜘の熱反応について妙だと言っていたが……。
それは、あの体毛に予め帯電していた電気の反応だったのか……。
紫電蜘は今まさに、パチパチと体毛に電気を走らせている。
これは、やれてないですわ。
状況が一つも好転してねぇ……。
っていうか、むしろ悪くなったか?
「申し訳ありませんマスター……
私が余計な事をしたばっかりに……」
俺の心情を察してか、リコが謝罪を述べた。
いや、謝られても困るんだが……。
「今は過ぎた事なんてどうでもいい
それより、対策を考えろ」
俺は、リコにそう命令したが。
「は、はい……
ですが、有効な攻撃手段はもう……」
なにやら、無理そうだった。
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