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……もう無理だった。
涙を耐えるなんて出来なかった。
「ゴメン……。オレがたくさんの事を忘れてしまって、それでミユキを傷つけているんだよね?
遠慮なく言って。ミユキは何がそんなに哀しいの?」
リューマは涙を流す私を不可解に思っているのか、哀しそうに眉を寄せてそう言った。
「リューマは大事な事を忘れているの」
「……?」
「私の事……思い出せない……?」
「ミユキは、オレの専属スタイリストで……他に何かあった……?」
リューマは困った顔して首を傾げた。
「ただ……ミユキの泣き顔を見てると……罪悪感が湧いてくる……」
「…………」
「ミユキを泣かせたくないって思った……。
いつもいつも、オレは自分の事でミユキを泣かせてた
……気がする……」
リューマは、私をジッと見つめながら、
泣いてる私の頬に触れた。
沸き上がる感情から、何か思い出そうとしている様子だった。
思い出して……
私を……お願い。
祈る想いでリューマを、見つめ返す。
私は、いつもリューマに振り回されて泣いてたんだよ……!
それでも、リューマの事が大好きで、嫌いになれなくて、
一度は心が折れて、離婚する!なんて突きつけた事もあったけど
結局、そんなの無理だった。
だってすごく好きだから。
世界中で一番愛しているから。
そしてやっと巡り会った運命の人だから。
後から後から溢れてくる涙を拭わずにリューマを見つめる。
リューマがゆっくり口を開いた。
「キス……して……いい?」
「…………」
掠れた声を出し、リューマに熱っぽい眼差しを向けられてドクンドクンと胸が早鐘を打ち始めた。
私はコクリと頷いた。
私を……
思い出して……
近づいてくるリューマの綺麗な顔。
私はゆっくり瞼を閉じた。
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