27人が本棚に入れています
本棚に追加
そして当日……。
大興奮して昨夜はほとんど眠れなかった。
私は出掛ける支度を済ませ、
ドレッサーに映る自分の顔を眺めた。
久し振りにメイクしたせいか、
化粧のりが悪い。
それとも妊婦になると肌が荒れるのかな……。
来ている洋服は、お腹を圧迫しないマタニティーパンツにドルマンシャツでお腹の膨らみを隠した。
そろそろ6ヶ月目に入るお腹は、少し膨らんできているけど、痩せてしまったせいか、まだ妊婦とは分からないほど。
ヨシと待ち合わせの駅に、私は自分のシザーケースだけを鞄に入れて身軽な格好で向かった。
秋を感じさせる少しひんやりとした澄んだ空気に、心地いい日差し。
こんなに足取りを軽く感じたのは凄く久し振りだった。
リューマに会えるという高揚感が昨日からずっと続いていて
心が幸福感で満たされている。
お腹の赤ちゃんもきっと喜んでる。
パパに会えるよー!
まだ……胎動は感じないけど
確かにいる私とリューマの赤ちゃん。
パパに会えたら、赤ちゃんも喜んで動いてくれるかな。
「ミユキ」
駅に着いて、改札の前まで来たらヨシが既にそこで待っていた。
ヨシの周りを行き交う女子は必ずヨシに視線を向けるほど
ヨシの外見は目立っていた。
イケメン美容師そのものに、ファッションだって抜かりない。
仕事をしばらく離れていて、マタニティー服に身を包む私は、いたって普通のアラサー女子だ。
「よし行くか」
ヨシが私のカバンを取り上げて、改札の方に足を向けた。
私が少しヨロめくと、
ヨシは過敏に反応して手を差し伸べてくる。
そんな様子を見てると
ヨシに対して感謝の気持ちがヒシヒシと込み上げてきた。
ヨシがいたから私は、壊れてしまわずに済んだんだ。
狡いけど
リューマの代わりの温もりが私にはどうしても必要だったんだ。
私、こんなに弱い人間じゃなかったのに……。
最初のコメントを投稿しよう!