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電車を乗る時や降りる時、駅のエスカレーターに乗っている時も、ヨシの手は然り気無く私の腰のあたりを支えるように手が添えられていた。
きっと、はたから見たらカップルに見えるんだろうな……。
リューマと再会できる事になったのもあって、その今まで気に止めてなかったヨシの優しい行為が、
今じゃ、リューマにすごく後ろめたく感じてしまう。
「ヨシ……」
「何?」
「あの、私もう大丈夫だから」
「何が?」
「私、フラフラしないで歩くから、私にそんな気を使わなくても大丈夫だよ」
「…………」
リューマの宿泊するホテルの最寄り駅に着いて、
改札を出た辺りでヨシに、おずおずとそう言った。
「何、急に。オレの存在が迷惑になった……?」
ヨシがにわかに眉を寄せて、私を覗き込んだ。
「そ、そんなんじゃない……」
慌てて頭を振ってヨシを見返す。
「誰の目を気にしてるんだよ。リューマだって奥さん忘れて好き放題やってんだから、気にすんな。
オレはミユキを心配してこうしているだけ」
「う、うん……」
ヨシに心を見透かされたようで、
なんとも、気まずい気分になった。
私、なんだか、サイテーだ。
「少しここから距離があるから、タクシーで行くか」
私たちはタクシー乗り場からタクシーに乗り込んだ。
「パークハイアットまで」
ヨシが行き先を告げるとタクシーは動き出した。
そして着いた先で降りると
高層ビルがそびえ立つそこが
宿泊施設のある、リューマが宿泊するホテルだった。
ヨシとエレベーターに乗り込み、ぐーっんと上へ上へと上がって行く。
そして着いた高層ビルの中間地点で
私たちは降りた。
足を踏み出したそこには、天井が高い吹き抜けになっていて、
壁はガラス張りで張り巡らされ、都心の迫力ある景色が視界にとびこんでくる。
竹林をイメージした緑がラウンジにドーンと構えてあり、
しばし身動き出来ずにヨシと二人で辺りを見渡した。
ここがホテル……?
「ミユキさん……?」
そんな挙動不審の私とヨシに近づいて
声をかけてきた人がいた。
その声の主を仰ぎ見て、
私は息が止まった。
「リューマ……」
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