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半年ぶりのリューマが目の前に現れて、口許に穏やかな微笑みを浮かべて立っていた。
リューマ……
褐色の肌に、服を着ていても分かるくらい筋肉隆々に逞しくなっている。
髪は肩下まで伸びていて後ろに無造作に束ねられていた。
私が知ってるリューマとは違い、雰囲気がガラリと変わっていて、私は息を飲みながらリューマを見つめた。
ずっと会いたくて恋焦がれていたリューマ。
リューマの色素のない瞳としばらく視線を絡み合わせ、
私の胸はぎゅっと締めつけられた。
こみ上げて来る涙を流れないように目の奥にグッと力を込める。
リューマ……会いたかった……!
「ミユキさんでしょ? ヘアスタイリストの」
リューマの声が懐かしく耳に響く。
声だけは変わっていない。
「はい……。ミユキです。今日はよろしくお願いします」
ドキドキする心臓を落ち着かせようと、言葉をハッキリと発しながら、頭をペコリと下げた。
リューマは、視線を私からヨシに移す。
「この方は?」
ヨシもリューマの変貌ぶりに言葉を失っていたようで
ハッとしながら口を開いた。
「オレは……彼女のアシスタント。
……ってゆーか、リューマ、だいぶ雰囲気変わったな。オレの事も覚えてないんだろ?」
ヨシはリューマの肩を軽く叩きながら砕けた口調で言った。
「へえ。オレとあなた、知り合いだった?」
リューマは半信半疑でヨシを見つめる。
「知り合いと言うより友達に近い」
「そうなんだ。覚えてなくて申し訳ない。名前はなんて言うの?」
「オレはヨシって呼ばれてた」
「ふぅん」
リューマは、あまり興味なさそうにヨシを横目で見ていた。
「ところでミユキさんのフルネームは?」
リューマの瞳は再び私に向けられる。
「本橋……深雪です」
リューマの懐かしい眼差しにやっぱりドキドキが止まらない。
「……オレと同じ苗字なんだ。」
「…………」
夫婦だから当たり前なんだけど、すかさずヨシが口を開いた。
「そうだよ、リューマとミユキは ふ……」
ヨシの口から“夫婦“って言葉が出てきそうなのを察し、私は慌てふためいて、
ヨシの腕を思いっきり引っ張った。
「ヨシ、待って!」
「は?」
ヨシは驚いた様子で私を見る。
「今はまだ黙っていて」
ヨシだけに聞こえるように小さい声で言った。
「なんでだよ」
「記憶なくしているし、まだ混乱させたくないの」
「…………」
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