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全員が自分とは反対方向にしか歩いていないんじゃないかと思えてきていた。
道はまっすぐ続いているはずなのに、人が次から次へと押し寄せてきてまっすぐに進めない。まるで障害物競争だった。まして避けなきゃいけないのは人だけではない。道を渡る時は、どんなに急いでいたって左右を確認しなければ車やバイクにひかれてしまう。これがゲームだったなら、ゲームオーバーになってもコンティニューでもう一度やり直しができる。
でも残念なことに、現実は今この一回きりだ。
どうしてこうなったのかを思い出していた。
真面目に学校にはちゃんと通っていたつもりだったのだが、成績はいつまで経っても下の下で、結局就職活動にも失敗し、バイトでなんとかその日を食いつないでいるような生活だった。いつだったか、「お前は名前負けしてるよな」と同級生から言われた言葉が今も頭から離れないでいる。
そう、俺はいつだって負け組だった。真面目バカだ。こんなんだったら、いっそ不良だったほうがマシだったんじゃないかと思えてくる。真面目に学校に行って真面目に勉強して、なのに成績はいつも最下位争いに巻き込まれていた。問題も起こさなかったが、これといって記憶に残るようなこともしていない、いつも教室の隅にいるような根暗な性格だった。名前負けしていると言ったのはクラスの学級委員だったやつだ。名前は忘れた。ただ俺とはあきらかに天と地の差だった。先生からも信頼され、友達も多かった。同じ人間なのにここまで違うのかと、あいつを見てはよく思ったものだ。そしてあいつの言葉も、あながち間違ってはいないと思ってしまっている自分がいる。
今は、いらない家電を引き取ったり、頼まれた場所の掃除をしに行ったり、引っ越しの手伝いをしたりしている。いわば『何でも屋』だ。
バイトも長くは続かず、転々としていた矢先に見つけたもので、もっぱら掃除やゴミ片づけが多かったが、それでも毎日同じことしかしないというわけではなく、たまに引っ越しの手伝いや、まだ自分は対応したことはないが浮気調査なんかもたまに舞い込んできて、それなりに変化がある仕事内容がどうやら合っていたらしく、今までで一番長く続いている仕事になる。
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