01runner-セイテンノヘキレキ-

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そして今白い箱は手元にある。 そしてなぜか俺は今、それを手にして走り続けている。そもそもなんだ。なんで俺はこの仕事を断れなかった。とことんダメだ。ダメ男だ。勢いでなんでも流されてしまう。流されてしまうから俺はこんなことになっている。この仕事はおかしい。というかこれは仕事なのか。終わりはどこだ。終わりを教えてくれよ。 振り返れば、黒いスーツを着た男たちがすぐそこまで追いかけてきていた。どこかで見たテレビ番組と似ていたが、サングラスはしていたりしていなかったりまちまちだ。 そもそもなんで俺は走っているのかを考える。 追われているからだ。なぜ追われている? 「非常に大切な箱であるため、奪う人間が現れるかもしれない。決して、運んでいる最中にとられないでください」 長谷川が依頼人から聞いて書いた汚いメモを読んでいる。 「絶対に箱は誰にも渡さないでください。手にした人がずっと持ち続けてください。どんなことがあっても…ってなんですかこれ」 「よくわからんが、そういうこった」 「そういうこったって。なんなんですかこの箱」 「だからわかんないって」「いや完全に怪しいでしょ。なんですか奪おうとする人が現れるかもって。どんな箱なんですかこれ」 「わかんないが、とにかく大事なものだそうだ」 「大事なもの?いくら大事でも人に追われるほど大事なものってあります?とにかく俺は嫌です。やめときます」 「断れないぞ」 「なんでですか。…これでクビになるんだったら、俺、それでもいいです」 「お前、持っただろ」 「……へ?」 「最初に持ち上げて抱えたやつが、運ぶことになっているんだそうだ。ほかのやつはもう触っちゃいけない」 「な…、なんですかそれ」 「俺にもよくわからん。ただ依頼人が言うには、最初にそれを抱えた人間がその箱を運ばないとダメなんだそうだ」 「べ、別にそんなの従わなくたって」 「従わないと大変なことになるらしい」 「え?」 「わからないんだが、とにかく大変なことになるらしいんだ」 「俺もよくわからないんですけど」 「まぁ、やれるだけやってみてくれよ。こんなおいしい依頼はそうそうないぞ」 じゃあ自分が行けばいいのに。 なんて言えないのが俺の性で、結局それでわかったのは、とにかく俺が、この白い箱を運ばないといけないということだけだった。
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