第1章

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 僕が一宮学園に入学してからあっという間に一年が過ぎ、気づけば僕は高校二年生になっていた。 と言ってもいまいち背は伸びないし、顔も幼いままだし、相変わらず地味で目立たない生活を送っていた。 一年生の時と一つ変わったことは、幼馴染の谷中浩介と同じクラスになったことくらいだろうか。 友達が多いとはお世辞にも言えない僕にとって、浩介は親友と呼んでもいいような間柄だ。 「真幸ー学食いこうぜー。」 お昼休み、いつものように浩介が僕を呼ぶ。 僕はため息をつきながら浩介に言った。 「僕はお弁当持ってきてるっていつも言ってるじゃん。」 「俺は持ってきてねーもん。いいから顔貸せよ。」 僕と浩介のやりとりを遠巻きに眺めていたクラスメイトたちがざわつく。 僕はその理由をよくわかっていたので、浩介の腕を引っ張って急いで教室を出た。 「おっ、なに?急に行く気になった?」 へらっと笑う浩介のお腹をはたき、僕は背の高い浩介を睨む。 「ちがうよ!浩介と僕が喋ってるところって、周りから見たら『不良に絡まれてる一般人』だから……。みんな心配そうな目でこっち見てただろ。」 「はー?マジ?ぜんっぜん気づかなかったわー。」 呑気なことを言ってあくびをしている浩介は、銀色に染めた髪をばっちりセットして、両耳にいくつもピアスを開け、ごつごつしたアクセサリーをつけている。 そのうえ三白眼気味で目つきが悪いし、言葉遣いが壊滅的に悪い。 僕だって幼馴染じゃなければこんな柄の悪い人と積極的にかかわろうとは思わないはずだ。 「売店で買えばいいのに。」 僕が言うと、浩介は顔をしかめた。 「割高じゃん。量すくねーくせに無駄にたけー。」 「じゃあ登校途中で買ってくるとか……。」 「荷物重くなるからやだ。」 「わ、わがままだな……。」 あきれて何も言えなくなったところで、僕たちはちょうど学食についた。 「あれ……なんか空いてるね。」 お昼時はいつも混んでいる学食が妙に空いている。 そしてそれと対照的にテラス席のほうに人がたくさんいた。 僕は一生懸命背伸びして人ごみができている原因を見ようとした。 「あ……。」 なるほど そういうことか…… 人の壁の割れ目から人ごみの中心を見た僕は納得してしまう。 「なーんだ、『王子様』ご一行じゃん。」 浩介も人ごみの原因が分かったらしく、拍子抜けしたようにつぶやいた。
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