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なんて言ったらいいのかな……
言葉に詰まった僕同様、木塚君もなにもしゃべらない。
おかげでまた居心地の悪い沈黙が流れる。
しばらくお互い黙ったままの状態が続いたあと、木塚君が唐突に言った。
「脱げ。」
「へ?!ぬ、脱げ?!なにを……?」
「服に決まってんだろ。脱げ。」
「な、なんで?」
「いいから早くしろよ!」
「っ、ご、ごめんなさい!」
大きな声にびっくりしてしまって泣きそうになりながら慌ててブレザーを脱ぎ、シャツのボタンを外そうとしたけれど、指先が震えてしまって上手くボタンが外れない。
苛々した顔の木塚君を前にしているとますます緊張してしまって、特別難しい作業じゃないはずなのになかなか服を脱ぐことができなかった。
「あーもう、おせえな!」
とうとうのろのろ脱ぐ僕にしびれをきらしたのか、木塚君がシャツを引っ張ってくる。
その瞬間蘇ったのは、中学時代の記憶だった。
服を脱がされて、体を押さえつけられて、それで、カッターで……!
「や、やだ!!」
とっさに叫んで木塚君を突き飛ばしてから、僕は自分がやってしまったことの重大さに気がつく。
し、しまった……!
今ので機嫌を損ねられたんじゃないかな……
だとしたらまた昔みたいに殴られる……!
「ご、ごめんなさい!あ、あの、僕……!」
だけど木塚君はなにもしてこなかった。
少し眉をしかめて、僕から一歩離れる。
「……いいから早く脱げって。」
「え……?あ、う、うん……。」
まさかこんな反応が返ってくるとは思わなかった……。
絶対殴られると思ったのに……。
木塚君の気が変わらないうちに脱いじゃおうっと……。
もたもたしながらもなんとか服を脱いだ僕は、脱いだシャツを体の前で握りしめて木塚君に先を促す。
まだなんのために脱がされたか分かっていない僕としては、このあとどうしようもない。
そんななか、木塚君は躊躇うように一歩踏み出すと、膝を屈めた。
それから僕の胸のわき、傷痕が残っているところをじっと見つめる。
「……やっぱり、痕残ったんだな。」
ぼそりと呟かれた言葉に答えていいのかどうか迷った僕に、木塚君はさらに言う。
「まだ痛むことあるのか?」
「う、ううん。さすがにもうないよ。」
「ふーん。」
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