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僕はそんなに変なことを言ったつもりはなかったけれど、木塚君の表情はなんだか複雑だった。
そしてしばらくだまりこんだ末に木塚君が言ったのはこんなことだった。
「お前、やっぱりお人よしだな。」
「そ、そうかな?」
「相当のお人よし。」
「そ、そんなことはないよ?」
「自覚なしかよ。」
眉を下げて小さく笑いながらそう言った木塚君は僕がまだ手に持ったままのシャツを僕の肩にかけ、ボタンをとめてくれた。
「…………ありがとな。」
「お、お礼を言われるようなことはなにもしてないけど……。」
「うっせ。いいだろ、言いたかっただけなんだから。」
「う、うん……。」
ボタンを留める手つきが優しくて丁寧……。
木塚君に昔いじめられた事実は変わらないけど、木塚君だって僕をいじめなきゃいけない状況に置かれてたこともまた事実。
……本当の木塚君には優しいところもある
なんていうのは、木塚君が言う通りお人よし過ぎるかな……。
そんなことを思って顔を上げると、木塚君と真正面から目があってしまった。
「っ、な、なんでいきなりこっち見んだよ!」
僕からばっと手を離した木塚君は、すごい勢いで後ずさった。
そして勢い余って壁にお尻をぶつけてしまったらしく、うめき声をあげてうずくまる。
「いってぇ……!」
「大丈夫?すごい音したけど……。」
「大丈夫。」
「で、でも……。ちょっと見せて。」
「い、いや、ほんと大丈夫たって!つーかくんな!」
「え?な、なんで?」
「な、なんでって、それは……!」
木塚君の顔がみるみるうちに赤くなっていくのを不思議に思って、僕はもう一歩木塚君に近付いて膝を屈めてみる。
なんで顔赤いんだろう?
もしかして、実はすごく痛いのを我慢してるとか?
「あの、木塚君?」
まるで僕から逃げるみたいに体をのけぞらせる木塚君に手を伸ばそうとしたとき
「はい、すとーっぷ。」
「わっ?!」
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