第3章

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眠いな……  通勤ラッシュの満員電車から降り、人であふれかえる駅の構内を歩いていてもいまいち眠気が覚めない。 前の日の疲れが残っているのか、起きてからずっとあくびが止まらなかった。 こんな日に限って朝から体育だったりするんだよね……  何回目か分からないあくびをしながら改札を出てしばらく歩いていたところでブレザーの上着のポケットに入れていたスマホが震えていることに気が付き、僕は慌てて確認する。 え!湊さん?! しかも電話?! 「も、もしもし?」 「おはよー。今どこ?」 「い、今ですか?改札出て少し歩いたところですけど……。」 「東口?」 「は、はい。」 「あっ。」 あっ? あってなんだろう? 首を傾げていると電話が切れてしまう。 「あれ、切れちゃった……。」 「上坂。」 「うわああ?!」 いきなり後ろから声をかけられた僕は、びっくりして飛び上がってしまった。 そしてそんな僕の反応に目を丸くするのは、他でもない湊さんだった。  湊さんは爽やかな笑顔を浮かべて言う。 「おはよう。」 「お、おはようございます。あ、あの、さっきの電話……。」 「うん、駅まで来たはいいけど、上坂がどっちの出口使ってるか分からなかったからさ。」 「えっと……湊さんの家って駅のほうじゃないんですよね?じゃあ……あの、わざわざ駅まで来てくれたんですか?」 「わざわざってこともないけどね。だって俺が上坂と登校したかったんだし。」 こんな笑顔で、こんなことさらりと言ってのける……さすがは「王子様」 これは女の子に人気なのもうなずける。 少女マンガに出てくる理想の男の子をそのまま現実にしたような感じだ。  僕がぼーっと湊さんを見つめていると、駅を歩いていた一学の女子生徒数人が駆け寄ってきた。 「如月先輩おはようございまぁす!」 「朝から先輩に会えるなんてラッキー。先輩って電車通学なんですか?」 女の子たちは湊さんに話しかけながら、同時に僕を不思議なものでも見るような目で見てきた。 そりゃ不思議だろう。 地味でこれといった特徴もない僕は、どこからどう見ても湊さんの友達とは思えないだろうし、部活の後輩といった雰囲気もないし…… 自分で言うのもなんだけど、すごく異質な存在だ。
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