第20章

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「へえ、谷中が……。シュウの場合、シュウのお父さんの秘書さんが一緒に来るらしいから、谷中のこと誘えなかったんじゃないかな。」 「なるほど……。」 そういうことならしかたないのかもしれない。 だけど浩介にそれを伝えてあげないと浩介が不安がるんじゃ……。 僕は浩介が今までの彼女たちとどんな付き合い方をしてきたかよく知ってるけど、今の浩介は今までのどの彼女の時よりも真剣に会長に向き合おうとしている気がする。 だからこそ不安になるんじゃないかな……。 「上坂?」 「あ、す、すいません、ちょっと考え事しちゃって……!え、えっと、それではあまり長くお話ししていると勉強の邪魔になると思いますし、そろそろ切りますね。」 「ははっ、そんなに気を遣わなくてもいいのに。でもそうだね、今日はお言葉に甘えようかな。それじゃまた明日の朝、駅でね。」 「は、はい、おやすみなさい。」 「おやすみ。」  電話が切れたあとも耳元に残る湊さんの優しい声がくすぐったくて、僕は握った携帯電話をなかなか離せなかった。 パーティー……僕と行きたいって言ってくれた……。 嬉しいな……。 自然とにやけてしまうほっぺたを手で押さえていると、窓が叩かれる。 「浩介?」 珍しい、最近窓から入ってくることなかったのに。 慌ててカーテンを引いて窓を開けると、浩介が白い息を吐きながら部屋に飛び込んでくる。 「さっみー!マジさみい!真幸、早く窓しめろ。あ、なんだよ今年まだコタツ出してねえのかよ。当てが外れた。」 部屋に入るなり文句をぶつぶつ言う浩介は、ポケットから融けかけのアイスを引っ張りだして僕に渡しながら勝手にベッドに潜り込んだ。 「ちょ、ちょっとやめてよ!人のベッドを勝手に使わないで!」 「あ?ちょっとくらいいーじゃん。」 「会長に言いつけるよ。」 「……。」 浩介ははたと動きを止めると、僕をじろっと睨む。 どうやら効果抜群だったようだ。 もぞもぞと布団から這いだして顔をしかめた浩介は、僕の手からアイスの袋をもぎとるさっさと開けて僕の口に突っ込んできた。 「んぐっ!」
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