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「咲菜!もうニャンコとお友達になったの?凄いじゃなぁ~い!」
杏奈さんが満面の笑みを放ち、合わせた指先でパチパチと手を叩く。
咲菜ちゃんが首の辺りを優しく優しく撫でると、猫は気持ち良さそうにゴロリとお腹を向け、体をクネクネさせて背中を地面に擦りつけた。
「猫ちゃんが咲菜ちゃんのこと大好きだって。良かったね~」
「ニャンコすき!ニャンコすき!ニャンコ、かわいいね!」
少女は溢れるような笑顔の花を咲かせ、嬉しそうにキャッキャッと声を上げる。
「……咲菜、本当によく笑う様になったわ。あんな笑顔、麻弥ちゃんと出会うまで一度も見せた事が無かったもの」
ベンチに腰を下ろした杏奈さんが、猫の後ろをついて回る咲菜ちゃんを眺めて呟きを落とした。
少女の背中に向けていた笑みを外し、しみじみと言葉を漏らした彼女の横顔を見る。
「私だけの力じゃありません。先生や杏奈さんや拓真さん、咲菜ちゃんを囲むみんなの愛情の力だと思います」
杏奈さんからの言葉を素直に嬉しいと思いながらも謙遜して、くすぐったさを感じ照れ笑いを浮かべる。
「咲菜は、雪菜ちゃんを失ってからずっと母親を求めてた。自分を守ってくれる、無償の愛を注いでくれる母親を求めてた。正臣がどんなに咲菜を可愛がっても、父親は父親。母性を持つ母親にはなれない。そして私も、咲菜の母親にはなれない」
「杏奈さん……」
「咲菜の母親は麻弥ちゃん、あなたよ。もし雪菜ちゃんに後ろめたさがあるのなら、そんな気持ちは今直ぐ捨てちゃいなさい。咲菜自身があなたを選んだの。
母親としての自信を持って。周囲の目なんて気にせず堂々としてて。…じゃないと私、安心してアメリカに帰れない」
杏奈さんが私を諭すかのように言って、懇願するその目に希望の灯をともす。
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