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車は町を離れ、山の中に差し掛かる。
人のいないところがいいからということで、目的地を田舎にしたのだ。
しばらく山道を走ったところで、道路から少し奥まった場所に廃旅館があることに麻衣美は気がついた。
こんな田舎じゃ、儲からなかったんだろうなぁと思いながら、建物に目をやると、髪の長い女がこっちを見ているのと目が合う。
まず人がいることに麻衣美は驚いた。
どうみてもそこが、営業をしているようには見えなかったからだ。
もしかして、まだ営業してるのだろうか?
麻衣美は哲にそのことを聞いてみようと思ったけど、哲はスマートホンをいじっていて、麻衣美の旅館の話にも、「へぇ~」とスマートホンから視線を上げずに答えただけだった。
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