詩名のお話

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妙に明るい、甘さたっぷりのマユコの口調に苛立ち、心が焦れる。 限界。そう思って私はマユコを振り切って歩きだそうとした。 っ・・・!!! マユコに腕を引かれて、引き寄せられる。 身体が揺らいでそのはずみで瞳に溜まってた涙が、ぽろっとこぼれ落ちた。 なんだ、私泣いてるの?かっこ悪すぎ。 そう思った瞬間に唇に何か柔らかいモノが触れた。 うんと優しくて、柔らかな感触。 ・・・それはマユコの唇で・・・・・ ぇっ・・・・???!!!!! 俯いた視界の端に映るマユコの唇は、穏やかな微笑みの形に結ばれていた。 「 ねぇ、私はしぃなの事好きなの。わかった? 」 「 しぃなは本当に私の事、嫌いになったの?ちゃんと私の事見て言ってみてよ 」 「 私にはねーわかっちゃうんだから。本当は、好きって思ってくれてるんでしょ~? 」 びっくりしすぎた私は、思わず顔を上げてマユコの瞳をみつめる。 私の事をみつめるマユコの眼差しは、なんだか困った子供に向けるそれみたいで・・・こういう時だけ年上の余裕とか、ズルい。なんて思った。 なのに私は下唇をかみしめて、ぽろぽろこぼれ落ちる涙をどうする事もできないまま、コクンと首を縦に振ってた。 本当に小さい子供みたい・・・。 でも私って本当はこうなんだ。 どんなに普段は私が大人ぶってたって、結局マユコといるとこうなっちゃうんだ。
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