◇◇ 第6章 お互いの傷 - 2 ◇◇

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なぜだろう?自分でもびっくりするほど、信じられないくらいに、素の心が訊いていた…… 一瞬、白石部長の瞳の奥が、わずかに揺れたのが分かった。 「……っ!?」 ハッと、我に返る。 ずいぶんと心の奥まで踏み込み過ぎたことを後悔した。そして、そんな事をした私自身が、誰よりも動揺していた。 慌てて視線を夜景に向かわせる。 何故、こんなことを聞いてしまったんだろう? 飲んでるとはいえ、あまりに不用意な自分を心の中で責める。 「……痛かったよ」 「えっ?」 ぽつりと零れ出た言葉が、重苦しい沈黙を破る。
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