◇◇ 第6章 お互いの傷 - 2 ◇◇

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「早川も話したいことがあるんじゃない?」 今度は逆に、白石部長から問いかけを受ける。 「私は……別に……」 「俺だけっていうのはフェアじゃないな」 柔らかなもの言いで、でも少しだけ挑発的な眼差しが、向けられる。 「そういうわけでは……」 「前に進む第一歩は、人に打ち明ける事から始まるんだ。経験者が言うんだから間違いないよ」 仕事の時とはずいぶん違う、親しみやすい表情でテーブルに肘をついて、少しだけ下から私の表情を覗き込む。 「じゃあ、ひとつ聞いてもいいかな?」 白石部長は、挙手するかのように右手を小さく上げた。柔らかな微笑みと、かわいらしい動作が、頑なな私に話しやすい空気を作り出す。
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