◇◇ 第6章 お互いの傷 - 2 ◇◇

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心を落ち着けるように、ふぅーっと息を吐き出して、さらに続けた。 「でもね、そのおばあちゃんも大事に至らず退院出来たし、その事に関して後悔はありません。 だけど、その後の就職活動は、さすがにもう手遅れで…… そんな時、派遣を通して正社員の道に進んだ先輩のお話を聞いて、それなら私もって思って始めてみました」 ピアノの演奏が終わり、お辞儀をした演奏者が静かに退場する。 「早川も結構、苦労してるね」 白石部長のグラスの氷が溶け落ち、わずかな音をたてた。 「さて、そろそろ本題に入ろうか」 「えっ!?」 「本当に、治したい痛みについて」 「……」
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