◇◇ 第6章 お互いの傷 - 2 ◇◇

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口に出した途端、あの頃の切ない感情が心を支配する。 「単なる憧れだったのかもしれないけど……好きでした」 「そう」 穏やかで、最小限の相槌が、ゆっくりと私の言葉を迎え入れる。 「約6年前かな、初めての派遣先での事です。 当時の私からすれば、しっかり社会人している4歳上の彼は、とても頼もしく、大人に見えました。 派遣として新米だった私に、正社員の方と同じように一から基本を教えてくれて…… 優しくて、気さくで…… 好きになるのに理由なんて要らなかった……」 一度開いた扉からは、ぽつりぽつりと素直な言葉が落ちた。
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