◇◇ 第6章 お互いの傷 - 2 ◇◇

24/38
前へ
/39ページ
次へ
同時に、窓ガラスに映る、ぼんやりと景色を眺めながら話す自分の姿に、急に恥ずかしさが込み上げてきた。 「なんて、ちょっと昔の想い出です!」 自然と開いてしまった心の扉を慌てて閉ざすかのように、明るく言って紛らわせる。 「続けて」 「えっ……」 「遠慮しないで、今夜はとことんつきあうよ」 逃がさないよとでも言うかのように、穏やかな眼差しが、私を包んだ。 とても不思議な感覚を覚える。 これは、上司としての尊敬からなのか、人生の先輩としての信頼感からなのか、それとも、今夜生まれた不思議なシンパシーのせいだろうか。 私は信じられないぐらい素直な気持ちで、ずっと心の奥に閉じ込めていた想いを少しずつ紡ぎ始めていた……
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

603人が本棚に入れています
本棚に追加