◇◇ 第6章 お互いの傷 - 2 ◇◇

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あの時の不安、戸惑い、悔しさ、疑心感、そして情けなさ…… さほど遠くもない記憶が頭を巡り、苦い思いが胸を締めつける。 さすがに、田所さんの名前こそ、口には出さなかったけれど…… 気がつけば、心の奥底に窮屈にしまい込んでいた想いを、ほとんど吐き出していた。 「あ……なんか、大したことないのに、重くてごめんなさい」 めいっぱい強がって、『えへへ』なんて言って横を見れば、白石部長は、ただ黙って神妙な顔つきで私を見つめていた。 「かわいいでしょ。こんな一面もあったんですよ」
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