◇◇ 第6章 お互いの傷 - 3 ◇◇

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「あっ、間違えた!優輝さんだった」 慌てて言い換えても、その表情は、すでに弱みを見つけたイタズラ小僧のように愉快に煌めいている。 童心に返ったようなやり取りと、交わされる言葉のタイミングが、なんだかとても心地いい。 心が軽くなった私は、まるでスキップでもしているかのよう気分で、優輝さんの横を歩いていた。 「では、ここで」 「本当にここでいいの?」 楽しい時間はあっという間で、気付けば、地下鉄の降り口で向かい合っている。 「ええ。優輝さんのうちの方向、本当は逆でしょ?由香里に聞きました」
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