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今日の退社前にも、綺麗に塗り直した唇に、一瞬、微笑みと一緒に贈られた眼差し……
『信じてる』
ここには居ない彼の声が、さらに胸に響く。
あとわずかで、田所さんと唇が触れ合う瞬間、ハッと金縛りが解けたかのように、私は顔を逸らしていた。
目の前にいるのは田所さん……なのに私の心は……
ゆっくりと、モヤモヤしていた霧が晴れてゆく。
さっきの職場へのお誘いにも、週末の観戦のお誘いにも、なんだかすべて掛かっていた心のブレーキ……
それは……
まぎれもなく、優輝さんの存在。
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