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横顔しか見えないが、拓巳さんは黙ったまま椅子に腰かけ、璃子ちゃんを真横に立たせ、ギィッと睨むかのように見上げている。
想定外の出来事に、璃子ちゃんの動揺は、ずいぶんと激しいものだった。
「拓にぃ、離して」
強張る表情とずいぶんと小さな声……でも明らかに動揺は隠せない様子。
それでも拓巳さんは手を離そうとはしなかった。
私の真正面で、ふたりの何も言葉もなく見つめ合う時間が流れる。
きっと、拓巳さんもこれまでのふたりの事の次第をすべて知っているに違いない。
璃子ちゃんの身に降りかかったいくつもの試練を……
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