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オレも出発直前にクレイから聞かされたので、寝耳に水だったのだけれど、シンシアの落胆はその衝撃の度合いを物語っていた。
表面上は普段と変わらなかったけど、信じられないようなミスをしたり、全く口をきかなかったり、動揺は明らかだ。
クレイの弁によると、ソフィアにはオレ達より先行してもらって、情報を収集したり、一族の者とつなぎを付けたり、陰で支援してもらう手筈なのだとか。
ソフィアに打ってつけの仕事だし、それができる能力もある。
クレイの判断には間違いないけど、シンシアを憤慨させるには十分な仕打ちだ。
「シンシア、俺は適材を適所に配置しただけだ。他意があったわけじゃない。お前にはお前の役目があるんだ。わかってくれるよな……」
いつもならクレイの甘い囁き攻撃に、すぐに篭絡されるところを今日のシンシアは一味違った。
「お言葉ですが、クレイ様とリデル様は男女です。一緒にいられない局面もあるでしょう。そんな時に、この方がボロを出したり、問題を起こさないと思われますか?」
「う、それは……」
おい、クレイ。そこで当惑するなよ、まるでオレを一人にできないみたいじゃないか。
「もし、私がお傍にいれば、それを未然に防いだり、事が起きても上手くフォローできると思いませんか」
「確かに……」
な、納得するな。
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