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「シンシア……いつも沈着冷静な君らしくないね」
「がっかりしましたか? 所詮、私はこの程度の女なのです」
「そんなこと言うなよ。オレ、シンシアのこと、ホントにすごい女性だって尊敬してるんだから」
「買い被りです」
「そう思うのは自分だけさ。意外と自分ではわからないものなんだ……それでさ、シンシア。付いてきたいっていう気持ちはすごく嬉しいんだけど、やっぱり君には残って欲しい」
「…………」
「君が役に立つのはわかっているし、オレの行動が不安なのも事実だ。でも、シンシアには帝都で待っていてもらいたい。それがオレの本心なんだ」
「リデル……様」
「これはオレの単なる我がままなんだと思う。けど、オレのせいで友達を危険な目に遭わせたくないんだ。ただ、それだけなんだ」
オレは知らず知らずの内にシンシアの手を握っていた。
「シンシア、オレの我がまま聞いてくれるかな?」
じっとオレを見つめ続けたシンシアは、急に肩の力を抜くとため息をついた。
「……わかりました。帝都でリデル様のお帰りをお待ちしましょう」
「ありがとう、シンシア。必ず、ここへ……シンシアのところへ帰ってくるから」
「約束ですよ」
「ああ、約束する」
「それじゃ、行ってくる。ユクもシンシアも元気でね」
クレイのところに戻ったオレはユクとシンシアをもう一度別れの挨拶を交わす。
ユクは目にいっぱい涙をため、シンシアは一生懸命にクールさを保とうとしてけど失敗していた。
二人に見送られながら、通用門をくぐる。
いよいよ、オレの新しい冒険の旅が始まるのだ。
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