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「おい、大丈夫か? 目が虚ろになってるぞ」
物思いに耽るオレを心配そうにクレイが見つめていた。
「あ、ごめん。続けてクレイ」
「ああ、人の多いカンディアを避けるという案もないこともないが、傭兵という身分で旅するなら、カンディアを通らないのは逆に不自然だしな」
カンディアには多くの傭兵団が拠点を置いていて、傭兵の街としても有名なのだ。
「が、さしあたってはジュバラクへ向かおうと思う」
ジュバラクというのは、今いる村からしばらくした所にあるこの辺りで一番大きな街だ。
領主はゼノールだかザノールとかいう男爵だったはずだ。
「お客さん達、ジュバルクに行きなさるんで?」
料理を運んできた宿屋の主人が驚いたように尋ねる。
「そのつもりだが、何か不都合なことでもあるのかい、親父さん」
「ああ、悪いことは言わん、ジュバルク周辺にゃ近づかん方がええ」
「ほう、そりゃまた、どうして?」
「盗賊団が頻繁に旅人を襲うんでさ」
主人の言葉にオレとクレイは顔を見合わせた。
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