二人旅

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 確かに両陣営の境界線は小競り合いが絶えないため治安が悪かった。  逃亡兵や契約切れの傭兵が野盗になったりするのも、よく聞く話だ。  ただ、最近は小康状態が長く続いていた上、皇女が帰還したこともあり、戦端が開かれる可能性がずっと下がった。  そのせいで、境界線の治安も目に見えて回復してきたと耳にしている。  今回、アリスリーゼ行きに最短ルートを選んだ理由もそこにあった。  本来、主街道と呼ばれる帝国が整備した帝国各地から帝都を結ぶ街道を通るのが、遠回りになっても比較的安全な経路だ。  けれど、先を急ぐ旅であること、道程の治安回復が期待できること、傭兵という身分を活かせること、この3点からカンディア経由で境界線沿いの道を進むこととなった。     まさかの盗賊団だ。 「よりによって、このタイミングで暴れなくても……」 「悪党の考えることに文句を言っても仕方ないだろう」 「でも……」  オレが口を尖らすと、宿屋の主人は言った。 「どうしてもジュバラクに行きなさるなら、この先の噴水広場にゼノール男爵の護衛隊が来てますんで、同行を頼んだらどうです」 「護衛隊?」 「ええ、ジュバラクからこの村をやってきた商人や旅人を護衛してきた者達でさぁ。盗賊団が現れてから、男爵様が行き来に護衛を付けて下さるようになったんで……もっとも護衛料が必要ですがね」  金をとるのか……ちゃっかりしてやがる。
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