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「……? 何のつもりだ」
「いや、些少だが詫び料さ。取っといてくれ」
「貴様!」
「そう怒りなさんな。こいつはガキなんで、物の道理がわかってないんだ。ここは俺に免じて矛を収めてくれると有り難いんだが……」
「おのれ、馬鹿にするにも……」
「それとも何かい、俺とやろうってのかい、あんた?」
クレイの目がすっと細くなり、表情が見えなくなる。
一瞬、鋭い刃物のような殺気を感じ、オレの腕に鳥肌が立った。
近くにいた隊長もそれを感じたらしく、息を呑むのがわかる。
「……こ、ここはお前の顔を立てて見逃してやる。次はないと思え!」
隊長は少し青ざめながら、小袋の感触を確かめると、そう言い放った。
「すまねぇな。俺から厳しく言っとくから安心してくれ」
先ほどの殺気が嘘のような柔和な顔つきで返答すると、クレイはオレと娘さんを連れて広場から立ち去った。
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