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「いいか、リデル。この世の中には『法律』といものがあるのは知ってるな?」
「馬鹿にするなよ。そのくらい知ってるさ」
オレ達は護衛隊の連中に囲まれながら、政庁舎に向かっていた。
政庁舎というのは領主が政務を行う施設で、居住している領主館とは別の建物なのだそうだ。
ジュバラクの政庁舎は、ちょうど街の中央に位置し、同じ敷地内に領主館もある。
「特に帝国には慣習法以外に明文化された『帝国法』がある。皇帝でさえ、これを無視することはできないんだ。各貴族領の自治についても『帝国法』の範囲内でこれを認めている」
「小難しい話はすっ飛ばしてくれ。結局、何が言いたいんだ」
「つまりな、法を無視して何でも力ずくで解決するというのは、無法者のすることなのさ。たとえ正義のためであっても、法を犯すという点では盗賊団とさして変わらないってわけだ」
「べ、別にすぐ暴力に訴えたりしないさ。あくまで話し合いに行くんだから」
「その割には、殴る気まんまんに見えるぞ」
ぎくっ。
「そ、そんなことないさ。心配性だなぁ、クレイは」
「今まで、お前のその言葉に何度、騙されたと思ってるんだ。さすがに俺も学習したさ」
し、失敬な。
今のクレイの口振りだと、まるでオレが後先考えずに暴れる輩に聞こえかねないぞ。
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