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すべてを言い終えたダレンは、相変わらず淡々としていたが心持ち清々とした表情に見えた。
「あのさ、ダレンさん。あんたの境遇には同情するけど、そのせいで多くの人間が迷惑と被害を受けたことをどう思ってるんだ?」
どうしても気になって、出て行こうとするダレンに思わず、聞いてみる。
メイエの件もそうだけど、被害を蒙った人も多いはずだ。
男爵を一方的に非難できる立場とは思えなかったのだ。
「それについては、申し開きするつもりはありません。私は復讐と強欲のため悪党となったのです。正当に裁きを受けるだけです」
臆せず答えるダレンに迷いはない。
目的のためには、他を犠牲にすることを厭わない覚悟なのだろう。
けど……。
「あんたは満足だろうけど、優しいお爺ちゃんが突然いなくなったら、孫娘さんは悲しむんじゃないのか?」
「それは……」
ダレンは一瞬、動揺を見せるがすぐに立ち直って、
「もう済んでしまったことです。過去は変えられません」
そう言うと、男爵とオレ達に一礼すると広間から立ち去った。
「クレイ、メイエを頼む」
部屋の隅でしゃがみ込んで動けなくなっているメイエの保護をクレイに頼むと、オレは男爵に近づく。
深く椅子に座り、病のせいか息の荒い男爵はオレに気がつくと目を開けた。
「これは、大変お見苦しい所をお見せしてしまいましたな。今回の件は、全てわしの不徳によるもの。どのような処断も受ける覚悟がありますぞ………皇女殿下」
オレの胸元のフィビュラを見ながら、男爵は言った。
バ、バレバレじゃないですか!
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