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「クレイ、少し雨宿りするか?」
「そうだな、そろそろこいつも限界のようだしな」
「リーリムはまだ平気みたいだけどね」
「乗り手に似て、神経が図太いんだろう」
「その台詞、そっくりお返しするよ。その馬、誰かと一緒で神経質過ぎると思うぞ」
クレイは苦笑いでそれに答えると、視線を前方に移して言った。
「まあそう言うな、ちょうどいいし、今夜はあそこで一泊するとしようか?」
クレイの目線を追うと、道から少し入ったところに掘っ建て小屋があるのが見えた。
雨風が凌げるなら、異存はなかった。
遠目には今にもつぶれそうな外観に見えたが、近づいてみると意外にも造りはしっかりしているようだ。
元々は狩猟小屋か何かだろうか。
裏手に回ると幸運にも厩も立派にある。
これで、リーリム達も雨風を凌ぐことができ、オレは正直ほっとした。
「俺は馬を繋いでくるから、お前は中の様子を見てきてくれ」
恐らくはオレを冷たい風雨から一刻も早く遠ざけようとするクレイの気遣いなのだと思ったけど、この際遠慮なく甘えることにする。
だって、本当に寒かったんだもん。
口には決して出したりしないが、内心クレイに感謝しながら、オレは扉を開け小屋の中へ一歩入る……そして、そこで固まった。
中には先客がいたのだ。
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