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こんな小屋に先客がいると思わなかったオレと同様、相手も雨の中を強行してくる酔狂な者がいるとは思っていなかったようで同じく動きを止めていた。
我に返ったオレの次の行動は、念のため携えていた愛剣の柄を握ることだった。
何故なら、中にいたのは20代前半ぐらいの綺麗な女性と人相の悪い大男の組み合わせだったのだ。
どう見ても犯罪現場に遭遇したとしか見えなかった。
オレの行動を見て、目を見開いて固まっていた女性が慌てて口を開く。
「ま、待ってくれ。この男はあたしの仲間だ。悪人じゃあない」
何度も間違われた経験があるのだろう。
オレの表情を見て、すぐさま誤解を解こうと声を上げた。
「そ、そうなの?」
オレは雨除けのマントを外し警戒しながら、ゆっくりと部屋の中へ進んだ。
「ああ、誤解させて悪かったね。ワーク、強面で大男のお前が近くにいると、誰だって警戒してしまうよ。少し後ろに下がっていてくれないか」
言われた男は大きな身体を一生懸命縮みこませると、部屋の隅へしおしおと下がった。
尊大な口調の小娘とうなだれた大男の対比が何だか笑えた。
オレの表情が和らいだのに気づき、相手の女性も安堵した様子で話しかけてくる。
「あたしは『サラ・エリュート』、あっちのでかいのは『ワーク』」
「あ、オレはリデ……」
「おい、リデル。どうかしたのか?」
オレが話そうとしたタイミングでクレイが外から入って来る。
そして、部屋の中央にいるオレとサラ、遠巻きに見ているワークに目を向け、訝しげな表情になった。
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