出会いと再会

5/14
前へ
/1300ページ
次へ
「いやいや、君もずいぶんと見目麗しいと思ったが、君の連れも実に良い男ぶりじゃないか。これは眼福、眼福」  サラさんは、見た目に反して男っぽい性格のようだ。  でも、嫌いじゃない。むしろ、好ましく感じた。 「クレイ、先客がいたんだ。……えと、さっき言いかけていたけど、オレはリデル。こっちは相棒のクレイだ」  オレは途中になっていた自己紹介を再開する。 「相棒?」 「ああ、オレ達は流れの傭兵でね。カンディアに向かっているところなんだ」  オレは最初に決めた設定どおりに身の上を説明する。 「なるほど、世の中が治まってきて傭兵さんも不景気だからねぇ」  サラさんはしたり顔で相槌を打つ。 「そういうサラさんは?」 「あたしは旅から旅の『文芸家』さ。ワークは今のところは、あたしの護衛ってとこかな」  『文芸家』……その名の通り、文を書いて芸と為し報酬を得る者。この時代では割と新しい職業だ。  前にも述べたが、時代は写本から木版、そして活版印刷へと書物の歴史は推移していた。  しかし、庶民が本を所有するには、まだまだ高価すぎた。  そこで登場したのが、貸本業である。
/1300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2924人が本棚に入れています
本棚に追加