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「誰か来たみたい」
「うかつに返事をするな。俺が出る」
クレイが近づくより先に、外の相手が声をかけてくる。
「突然の訪問、お許し願います。不躾で大変申し訳ありませんが、少々お尋ねしたいことがあるのです。よろしいですか?」
見知った人間の声。
まったく何で、ここで出くわすんだろう。
日頃から信心が足りないのは知ってるけど、神様はちょっと意地悪だ。
「私はヒュー・ルーウイックと申す者。もし、間違いでなければこちらにリデルと名乗る女性が逗留しておられませんか?」
よりによってこのタイミングでヒューと再会するとは思わなかった。
まあ、目的地が同じだから、そういう可能性も考えなかったわけじゃないけど、偶然にも程がある。
オレは振り向いて手を上げ、近づくクレイの足を止めた。
クレイは訝しげな表情を浮かべる。
どうやら、風雨のせいでヒューの声が奥には届いていないようだ。
オレに任せといて、という仕草を見せた後、扉に向き直りヒューの問いかけに答える。
「おられるも何も、扉の前に立ってるよ」
「おお、やはり。厩にリーリムによく似た馬が繋がれていたので、もしやと思ったのですが……」
ヒューの声は再会に驚きつつも喜んでいるように感じられた。
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