2925人が本棚に入れています
本棚に追加
/1300ページ
「宿の空きがなくて泊まれないって?」
「申し訳ありません、リデル様」
ソフィアがうなだれた表情で頭を下げる。
シトリカに着いたオレ達は街の入り口で、昔の仲間に会いに行くというサラ達と別れた。
同行してくれれば仲間に紹介するというサラの提案を、先行しているソフィアと合流する必要があったオレ達は丁重にお断りしたのだ。
できれば、もう関わりたくない気持ちだったけど、宿が決まったら絶対に知らせてくれと念を押された。
並々ならぬ興味と関心を持たれているのがわかって、少々げんなりする。
一度起きた厄介ごとは、そう簡単には終わってくれないようだ。
そして、別れてほどなくしてソフィアと合流を果たせたのだが、ここで困った問題が持ち上がった。
長雨による河止めのため、シトリカに宿泊客が溢れていたのだ。
「相部屋になって申し訳ありませんが、一人分は確保できています。そこにリデル様がご宿泊なさってください」
「それって、ソフィアが泊まっている宿屋じゃないの?」
「そうですが、お気になさらないでください。何とかなりますから……クレイ様とヒュー様には、そういうわけでご不便かけますが、私と同行願います」
「ちょっと待って、相部屋って女部屋なんだろう?」
「ええ、そうですが」
「今のオレは男を装っているから、そこには泊まれないよ。だから、その宿はそのままソフィアが使って欲しい。大丈夫、オレ達の方は何とかするから」
「ですが……」
「それでいいよな、クレイ、ヒュー」
「お前がそう言うなら」
「リデルがそれで良いなら私は構いません」
普段なら、何が何でもオレを宿屋に泊めさせるだろう二人が、離れ離れになることに抵抗があったのか、オレの提案に賛同してくれる。
「ね、二人もそう言ってるから」
そう言って無理やり、渋るソフィアを納得させた。
最初のコメントを投稿しよう!