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「護衛のワークにしてもそうだが、一介の旅芸人というには、あまりにも無理があり過ぎる」
「我々が一介の傭兵と言い張るのと同じくらい無理がありますね」
「ヒュー……じゃなかった、キース、混ぜっ返すな」
「すみません。けれど、こちらが向こうのことを怪しいと考えているなら、向こうも同じように考えていると思いませんか」
「それはそうだが……」
「今のところは良好な関係を保っているのです。どのような理由で素性を隠しているかはわかりませんが、あえて、波風を立てない方が賢明でしょう。仮に、このままの状態が続いたとしても、我々が油断しなければ、遅れを取ることはないと思いますよ」
ヒューの意見にクレイも渋々頷く。
「そうだな、確かに怪しいのは間違いないが、こちらに危害を加えるとは限らないしな」
「ええ、現在は上手くいっていますし、前向きに考えましょう」
「クレイ、オレもヒューの意見に賛成だ。寝た子を起こすような真似は避けた方がいいと思う。それに、そんなに深く考えなくても、河止めが明けたら、さっさとサラ達と別れてカンディアへ向かえばいいのさ」
オレの楽観論にクレイとヒューは顔を見合わせたが、この時のオレは今の事態をそのぐらい軽く考えていたのだ。
けど、実際の物事はそう簡単には進まないことを、後々痛感することになる。
ちなみに、待ちわびていたピレゼウ河の河止めは、翌日に解除された。
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