暁の流路

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『見てください、二人とも。あれがイオスターナ……帝都なんですね』  登りきった山道から見下ろすと、夢にまで見た帝都が臨めた。 『とうとう、ここまで来たのですね』 『ええ、エミリア様。あと少しの辛抱です』 『本当にありがとうございます。お二人のご助力のおかげで、ここまで来ることができました。どうやって、その恩に報いれば良いか、正直私にはわかりません』 『いえ、エミリア様がご自分で頑張ってこられた賜物です。私の助力など微々たるものに過ぎません。また、どうしても礼を示したいというご意志ならば、どうか立派な皇女に御成りください。それが私にとって最大の返礼となりますれば』 『リュー様……』 『主従の厚い交わりも結構だが、帝都に着いてからにしてくれるかな』  レインは厳しい表情で周囲の岩陰に隠れている一団を一瞥した。 『どうやら、帝都まで素直に通してくれる訳にはいかないようだ』 ◇◆◇◆◇ 「確認なんだけど、サラの仕事の手伝いは河止めが明けるまでで良かったんだよね」 「もちろん、その通りだ」  サラの返答にオレは安心する。  話の流れでサラの仕事の手伝いをすることになったけど、考えて見れば、期間を明確にしていなかったのだ。  ただ、河止めが明ければ、サラ達と一緒にいる理由がなくなるので、そこまで手伝うのが条件だと暗黙の内に考えていた。  けど、サラもそう了解しているかわからなかったので、冒頭の確認となったという訳だ。 「じゃ、名残惜しいけど、お別れだね」 「リデル、少し待ってくれたまえ」  オレが肩の荷が下りた気分で立ち上がろうとすると、サラが引き止める。
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