暁の流路

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「うるさいなぁ。それより、ちゃんとノックしろよ。一応、乙女の部屋だぞ」 「何言ってんだ。ちゃんとノックしたけど、返事が無かったんだからな。それに男同士って触れ込みで泊まってるんだ。あまり気を使うと逆に変に思われるだろ」 「いいから、黙っててくれ。オレは疲れてんだから」 「機嫌悪いな。本当に体調が悪いんだな」  もし、下らないこと言ったら、真剣に引っぱたこうと思ってたけど、どうやら真面目に心配しているらしい。 「一応知らせておくが、ソフィアには一足先に西シトリカに渡ってもらったからな。俺達が向こうに着く頃には情報収集を終えているだろうよ」  昨晩は、慰労を兼ねてその打ち合わせをしていたってわけだ。  クレイとソフィアのことだから、色っぽい話になるなんて思わないけどさ。 「ま、時間になったら起こしに来てやるから、それまで休んでたらいい」  クレイは優しげな口調で言うと、静かに戸を閉めて出て行った。  オレは枕に顔を埋めると、ここ最近のことを振り返る。  ちょっと、いろいろ我がままが過ぎたかな。  クレイやヒューに甘えてばかりな気もする。  舞台が終わって安心したせいだろうか、どうにもマイナス思考に陥っているのが自分でもわかる。  クレイの気持ちは……わかってる。  オレのこと、大切に思ってくれているけど、それは『主』としてだ。本人がそう言ってから間違いない。  じゃあ、オレは……。  考えると頭が痛くなる。  もう一眠りしよう、オレは仰向けになると目をつぶった。
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