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「諸君、ようやく雨季も明け、恒例のシトリカ祭が催される運びとなった。これもひとえに諸君らの日頃の精勤の賜物であろうと思う。よって、ここにささやかな宴を用意した。存分に食し歓談し、日々の所労を癒していただこう」
シトリカ市長であるチェリオ男爵が口上を述べる。
オレ達は、市長主催の河止め明けの祝賀会に参加していた。どうやら、雨季が明けたことを祝うシトリカ祭と兼ねたもののようだ。
祝賀会は市庁舎の中庭での立食形式で行われ、料理・給仕等のサービスはホテル『シトリカの涙』が受け持っていた。
なので、後半スター扱いで食生活の向上したオレとしては、目新しさは感じなかったけど、プレッシャーの無くなったことから、とても美味しく感じられる。
招待客の顔ぶれは、さすがに市長主催の祝賀会ということで、シトリカ市では著名な名士が招待されているらしく、全体的に年齢高めだ。
もうすぐ18歳になるオレは、その中で目立っていたようで注目の的になっていた。
『喝采の嵐』からは、オレ以外に座長とフォルヴァイン、クレイとヒューが招待客として参加している。
立食形式ということから、交流がメインのパーティーなようだけど
、すぐにシトリカを立つオレ達としては、シトリカの名士達と誼を通じても、あまり意味が無いため食事に専念することにした。
ヒューの軽い非難の眼を気にしながら、料理を食いまくっていると、仰々しい一団が近づいてくる。
誰かと目を向けると市長ご一行様だ。
本来は招待客が市長に会いに行くの筋なのだけど、たくさんの招待客が列を成していたので、後にしようと思っていたら向こうの方が痺れを切らしてやってきたようだ。
「おお、リデルさん。昨晩の貴女の演技には魅入られてしまいましたぞ」
頭がつるつるで体格が横に広く、目玉がぎょろりとしている好色そうな中年のオジサンだ。
ん、何だか既視感があるぞ。
誰だったっけ?
あまり良い印象じゃなかったようだけど。
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