次の街へ

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「お前の性格は、オレが一番良くわかってるつもりだ。その単純で馬鹿正直なところは、傍で見ていて危うすぎてほっとけないが、嫌いじゃない。それどころか、お前の愛すべき美徳の一つだとも思う」  そりゃ、どうも。ただ、貶されてるのか褒められているのか、今ひとつよくわからないけど。   「だから、サラに秘密を打ち明けたいという気持ちもわかるし、お前の信条に沿った行動であることも理解できる。が、今回は我慢して欲しい。無論、全て打ち明けるなとは言わない。女であることを隠し通すのは、どう考えても無理な話だ。なので、それをサラに告げることに否は唱えない。しかし、皇女の件は駄目だ」  クレイはオレの表情を見て、さらに続ける。 「どんなに仲良くしようと、その人にはその人の立場がある。普段は優しい人柄でも、立場上相手にとって冷酷な行いをせざる得ないことは往々にあるものだ。サラがどこに帰属しているかわからない以上、皇女の件については明かすべきではないと思う」 「そんなことは……わかってる。オレだって……」 「納得してくれとは言わん。お前の気持ちも大事だが、それよりもお前の安全を俺は優先したい。だから、今回は俺が無理矢理、お前の意思を押さえ込んで秘密を守らせたと思ってくれていい」  自分が悪者になることで、オレの精神的負担を和らげようとしていることが容易にわかる。  クレイらしい配慮の仕方だ。    でも、オレだってそこまで我がままじゃないし、道理をわきまえていないわけじゃない。    「クレイ、オレのこと世間知らずの愚か者だと思ってるな。今のオレを取り巻く状況を楽観視するほど、無自覚じゃない」  オレはクレイを安心させるように言った。 「だから、クレイに言われたからじゃなく、自分の意思で必ず秘密は守るよ」
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